前回のに引き続き、「〜たら・と・ば・なら」を使った条件文(前文が後文の条件を表す文)の違いについてまとめていきたいと思います。
前回の記事「〜たら・と・ば・なら 〜整理編〜」は①仮定のレベル、②時間的な前後関係、③断定や言い切りの形以外の表現を後文に持つか、の3つの観点から比較と分析を行いました。
今回は「結局、いつ・どんなときに使えばいいの??」という視点から、「たら」「と」「ば」「なら」の働きと特によく使われる状況についてまとめたいと思います。
目次
- 「たら」「と」「ば」「なら」の働きとよく使われる状況
- 「〜たら」:特定の状況( 前文「〜たら」)の中に、話し手の言いたい意見(後文)がある
- 「〜と」:前文(〜と)と後文のつながりが非常に強く、前文が起こったら必ず(高確率で)後文が起こる。
- 「〜ば」:前文(〜ば)が後文が成立するために必要な条件となっている。
- 「〜なら」:文脈の中で出てきた主題(トピック)や相手の言葉を受け、それに言及(提案や要求など)する
- まとめ
「たら」「と」「ば」「なら」の働きとよく使われる状況
「たら」「と」「ば」「なら」は、同じ条件文に分類されますが、少なからず意味や使われる状況に違いがあります。
整理編ではさらっとした紹介しかできていませんが、「たら」「と」「ば」「なら」の働きとよく使われる状況について、もう少し堀り下げて考えてみましょう。
「〜たら」:特定の状況( 前文「〜たら」)の中に、話し手の言いたい意見(後文)がある
・もし明日暇だったら、一緒に映画でも見ない?
①話し手には聞き手に伝えたい内容(映画のお誘い)があります。
②ただし、それは特定の状況(聞き手が暇である、という状況)でのみ有効です。
→もしも[②特定の状況]だったら、[①話し手の言いたいこと]が成立します。
意味の中心がオーソドックスに「仮定(もしも)」にあるため、「〜たら」は最も汎用性が高いとされています。
「〜たら・と・ば・なら 〜整理編〜」でも書きましたが、混乱を避けるため学習者には条件文は「〜たら」で基本的にOK!と伝えます。
そして、その後の学習過程で「〜たら」が使えない状況、「と・ば・なら」を使う方が自然な場合を追加で入れていくようにしています。
「〜たら」のキーワード:「仮定(もしも)」
「〜と」:前文(〜と)と後文のつながりが非常に強く、前文が起こったら必ず(高確率で)後文が起こる。
「〜と」の最も注目すべき特徴は、前文と後文の結束性の強さです。そのため、生理現象や科学的事象・仕組み、繰り返される習慣など長い時間をかけてつながりが証明されている事実の説明に使われます。
・お酒を飲むと顔が赤くなる。(生理現象)
・氷が溶けると水になる。(科学的事象)
・この店は5時になると閉まる。(慣習)
?この店は来月になると閉店する。(1回しかない「閉店」は不適)
反対に、話し手の意思や提案などの事実に遠いものとは相性が悪いです。
? 夏になると海へ行こう/行きましょう。
「〜と」のキーワード:「事実関係」
「〜ば」:前文(〜ば)が後文が成立するために必要な条件となっている。
「〜ば」は前文が条件を表し、それを満たした場合のみ後文が成立することを意味します。意味自体は「〜たり」とよく似ており、ほとんどの場合置き換えが可能です。しかし、条件という性質から解決策やアドバイスによく使われます。
・A:両面でコピーしたいのですが、どうすればいいでしょうか。
B:ああ、このボタンを押せば両面コピーできますよ。
A:ありがとうございます。
また、前文が達成すべき条件となっているため、後文には達成後に起こるポジティブな内容が多いです。(この差は本当に微妙なものかもしれませんが、、、、)
? この薬を飲まなければ、病気は治らない。(ネガティブな後文)
・この薬を飲めば、病気は治る。(ポジティブな後文)
また、「〜ば」は条件の意味を強く持っているので慣用表現や常套句などによく使われたりします。
・犬も歩けば棒に当たる
・待て、話せばわかる、、、!
・泣けば許されると思うな!
・もう、ああ言えばこう言うんだから、、、
「〜ば」のキーワード:「条件」「慣用表現」
「〜なら」:文脈の中で出てきた主題(トピック)や相手の言葉を受け、それに言及(提案や要求など)する
「〜なら」は相手とのやり取り、つまり文脈が非常に大切になります。相手の様子や言葉を受け、そこに注目して何か提案や要求をしたり、それについて意見を述べたりします。
・A:何かおすすめの映画ある?
B:おすすめか〜。ミステリーなら「〇〇」、恋愛系なら「〇〇」、ファンタジーなら「〇〇」とか面白いよ!
・A:(出かけようとしている)
B:あ、外に出るならついでにゴミ出してきて。
・A:〇〇さん見てない?探してて、、
B:ああ、〇〇さんなら体調悪いからってさっき帰ったよ。
「〜なら」のキーワード:「文脈 (相手) 」
まとめ
今回は「結局、いつ・どんなときに使えばいいの??」という視点から、「たら」「と」「ば」「なら」の働きと特によく使われる状況についてまとめました。
前回の整理編では「たら」「と」「ば」「なら」それぞれの違いについていくつかの観点から、◯(自然)or×(不自然)の2択でわかりやすく分類しました。
「では、どうして自然・不自然といった違いが生まれるのか?」
その答えは、そのことば一つ一つが持つ「核=本質的な意味」の中にあると考えています。
今回は用法や使い方といった「ことばの表面部分」だけではなく、ことばのニュアンスや不自然さにまで影響する「ことばの内面部分」にまで踏み込めたらと思って書かせていただきました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました🌱
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